異音

小説書いていきます。

シリアス

僕の中に棲む悪魔 柊の話

俺は柊の中で生まれた。一番最初に見たものは自分に殴りかかる男だった。自分でも不思議なことにその男が父親だってことはすぐに理解したよ。きっと柊の記憶を最初から引き継いでいたんだろうな。あ、先に言っておくが、俺は両親が死んだときの事故には一切…

僕の中に棲む悪魔 かりんの話

「‥‥誰?」苦しそうにこっちを見ながら、掠れた声でかりんはそう言った。その言葉で俺は我に返る。「何言ってるの、かりん」手の力を緩め、大嫌いなあいつの口調を真似て言った。かりんは自分でも何を言っているのかわからないというような顔をする。なんだ…

僕の中に棲む悪魔 かりんの話

私は物心ついたときから、ひいくんと一緒だった。ひいくんはいつも優しかったけど、どこか頼りなかったわ。でも、そんなとこも可愛いなって思って、気が付いたら好きになってたの。ずっと一緒にいたくて、高校も同じ学校を選んだ。「偶然だね」なんて笑いな…

僕の中に棲む悪魔 かりんの話

かりんは僕の幼馴染みです。物心ついたときから一緒にいました。美咲とは小学校に入ってから知り合ったので、彼女と一緒にいる時間の方が長いのです。彼女はとても気が強くて優しい女の子です。学校では少し目立つ女子達の輪の中にいながらも、クラスに馴染…

僕の中に棲む悪魔 椿の話(番外編)

私は慕ってくれるかりんちゃんや大切にしてくれるひいくんが大好きだった。勿論、あの子のことも大好きだったのだけれど、あの子への気持ちだけ少し違ったの。あの子とひいくんは真逆なようでとてもよく似ていて、自分が庇っているのがあの子だと気付くのに…

僕の中に棲む悪魔 椿の話

俺は小学校低学年の頃、両親が事故死するまで虐待を受けてたんだよ。椿は頭も外見も良く、両親にとって自慢の娘だったんだろうな。両親は椿だけにはとても優しかった。そして、柊は両親の機嫌が悪いことを察するとすぐにどこかへ消えていた為、両親の怒りは…

僕の中に棲む悪魔 椿の話

お姉ちゃんは私を本当の妹のように可愛がってくれていたわ。そして、私も本当の姉のように慕っていたの。お姉ちゃんとの買い物はいつだって楽しかった。服屋では色んな洋服を試着しては私に見せるの。雑貨屋では髪留めのリボンを指でつまんで髪に翳しながら…

僕の中に棲む悪魔 椿の話

僕と姉の椿は二人きりで外出することもよくあるような仲の良い姉弟でした。椿の買い物に付き合っているときは店員の方から「彼氏さん」と呼ばれることが度々ありました。僕達は姉弟と思えない程に顔が似ておらず、年も一つしか変わらなかった為、恋人同士に…

僕の中に棲む悪魔 美咲の話

「美咲!こっちだよ」車道の向こう側でいちょうを眺めていたあいつは、その声に反応して俺達の方を向いたんだよ。「早くおいで!」俺がそう言うと予想通りあいつは車道に飛び出して、走行していたトラックに轢かれたよ。馬鹿な奴だよな。左右確認くらいでき…

僕の中に棲む悪魔 美咲の話

私はあの子が嫌いだった。憎くて仕方なかったの。だから、六年前あの子が轢かれたときは嬉しかったんだ。あの子も大好きないちょうと舞うことができて嬉しかったんじゃないの?ああ、でもびっくりしたなぁ。だって、目の前で人が跳ねられるところなんて初め…

僕の中に棲む悪魔 美咲の話

彼女がこの世を去ったのは六年前の秋、僕達がまだ小学五年生のときでした。彼女は僕の目の前で、トラックに轢かれたのです。宙に舞った彼女は一枚のいちょうと共に、ゆっくりとアスファルトの上に落ちていきました。状況がすぐに把握できなかった僕はその場…